様式15

聞き取り実演の読み合わせ台本(送迎版)

第7回 0:21–0:41「講師実演:本気の聞き取り・送迎版」の正本。設定資料「主任Kの夕方」と、読み合わせ台本の全文を収める。

この様式は講師用です。受講者には配布しません。

本様式は講師が読み上げるための台本であり、演習テキストの受講者配布分には綴じ込みません。受講者の1人に主任K役をお願いする場合も、渡すのは配布物ではなく、該当ページの画面共有だけとします(内容は台本のまま。アドリブは求めません)。台本を先に読まれると、受講者が「どこで失敗したか」を自分で見つける学習が成立しなくなるためです。

この実演が担うもの

第7回は後半6回(送迎表)の初回であり、ここから講師は答えを先に見せません。受講者が自分の手で組み立て直すための出発点が、この聞き取りの実演です。受講者は全員がメモ役を務め、良い質問だと思ったものをチャットに写します(良い質問の写経)。写した質問は、そのまま今週の宿題である本番の聞き取り10分で使えます。

登壇の条件

時間配分(20分の内訳・設計値)

区分内容
導入2相手の設定・「わざと2回失敗する」の予告・五問カードを出させる・写経の指示
場面1〜24失敗①(禁じ手)と言い直し/問1 直近の事実
場面3〜43問2 一番時間がかかる部分/問3 やらないと誰が困るか
場面5〜64問4 しのぎ方(この回の中心)/問5 消したい手間
場面73要約の確認と失敗②(想像の数字)/安全の要求が出る
場面84実演後の整理・写経の確認

この分数は設計値であり、実測での検証が済むまで「20分に収まる」と断定しません。読む速さで前後した分は、時間調整の型(予備の確認質問・次回予告)で吸収します。

様式15 ①

設定資料「主任Kの夕方」

聞き手(講師)と主任K役が、実演の前に読んでおく背景。受講者には読ませない。

主任Kは架空の人物である。勤め先も架空の複合事業所であり、地域名・法人名・学校名は設定に含めない。読み合わせの中でも、実在の事業所が思い当たる固有名詞は出さない。

事業所の設定

放課後等デイサービスと通所介護を併設する複合事業所。主任Kは40代で、送迎の段取りを長く担っている。夕方の送迎対象は児童14人。曜日によって9人から14人のあいだで増減する。通っている学校は4校あり、下校時刻はそれぞれ違う。

送迎車は3台。普通車が1台、ワゴンが1台、リフトの付いた福祉車両が1台。運転できる職員は4人いるが、そのうち2人は週3回勤務のパートで、いない曜日がある。子どもの隣に付く添乗職員に入れるのは2人。便は15時台と16時台の2便に分かれている。

車椅子のまま乗る子が2人いる。リフトの付いた車は1台しかないので、この2人を同じ便に乗せることはできない。チャイルドシートが必要な子が2人。一人で座席に座るのが不安で、隣に職員が必要な子が1人。火曜日は、車椅子の子とチャイルドシートの子が重なる曜日である。

夕方の30分

夕方4時前。主任Kは、事務室のホワイトボード1枚の前で、翌日の乗車割当を組み直している。誰を、どの車に、どの順番で、何時に乗せるか。所要はおおよそ30分。ただし「明日は祖母が迎えに行きます」といった変更の電話が入った日は、1時間近くかかる。この電話は週に3本から4本入り、学校行事で下校時刻が変わる週は、毎日組み直しになる。

組み上がった内容は、ホワイトボードに書いたままにする。表として紙に起こす日もあれば、起こさない日もある。前の日の夜、Kは自分の携帯でホワイトボードを1枚撮っておき、翌朝、車の中でそれを見返す。運転に入る職員のうち、この1年で入った2人は道順をまだ覚えていない。Kが助手席に座り、口で案内している。回る順番を全部覚えているのは、いまのところK1人である。

降車のときは、Kが座席を一列ずつ見て回る。最後に送迎表のいちばん下にあるサイン欄へ、自分の名前を書く。ここだけは、誰にも代わってもらっていない。

この設定資料の数字(14人・3台・4人・2人・2便・4校・30分・約60分・週3〜4本)は、聞き取りで受講者に拾わせるための材料である。読み合わせの中で、講師の側から先に読み上げないこと。数字は、問われて初めて出る。
第10回で配る様式16〜18(利用者A〜F・車両1〜3・ルールブック8か条)は、この物語をそのまま写したものではない。演習で全曜日を検算できるように、人数と条件を絞った別の架空データである。受講者から「Kさんの事業所と人数が違う」と質問が出たら、そのとおりに答える。
様式15 ②-a

主任K役への指示 ── 答えを言いすぎない

読み合わせの前に、K役(講師または受講者1名)が必ず目を通す。

K役の唯一の約束

聞かれた分だけ答える。先回りして説明しない。台本にない情報を足さない。困っている人を演じるのであって、上手に説明できる人を演じるのではない。

この実演の教育効果は、聞き手の質問が良かったときにだけ情報が出てくる、という一点にかかっている。K役が親切に全部話してしまうと、受講者には「質問の力」が見えなくなる。台本の各場面には、その場面で初めて出す情報と、聞かれるまで出さない情報を書き分けてある。

情報の出し方の設計

場面講師が使う問Kが初めて出す情報聞かれるまで出さないもの
1禁じ手(失敗①)「便利なやつがあれば嬉しい」という要望だけ作業の中身・数字のすべて
2問1 直近の事実昨日の夕方・ホワイトボード・火曜の重なり・30分添乗職員を書き落とすこと
3問2 一番時間がかかる部分変更の電話・行事の週は毎日電話の本数(週3〜4本)
4問3 やらないと誰が困るか子ども・家族・学校・運転する職員安全に関する不安
5問4 しのぎ方携帯の写真・助手席の口頭案内写真が朝には古くなること
6問5 消したい手間毎回ゼロから組み直すこと同上
7要約の確認(失敗②)電話の日は約60分・乗せ忘れが怖い座席の見回りとサイン欄

一人二役で演じる場合

受講者にK役をお願いする場合

様式15 ②-b

読み合わせ台本(全文・その1)

場面0 導入 ── 場面2 問1「最後にやったのはいつですか」

場面0 導入(受講者へ・約2分)

講師

これから、送迎の聞き取りを最初から最後まで実演します。相手は架空の主任Kさん。毎夕、ホワイトボードの前で30分、翌日の送迎表を組んでいる人です。私は途中で、わざと2回失敗します。どこで失敗したか、見ていてください。前半の座学で学んだ五問カード、手元に出してください。私がどの問を使ったか、カードで追いかけてください。

講師

もう一つお願いします。皆さんは全員、メモ役です。良い質問だと思ったら、その質問をそのままチャットに写してください。写した質問は、今週の宿題 ── 本番の聞き取り10分で、そのまま使えます。

ここで五問カードが出ているかを画面で確認する。出ていない受講者がいたら10秒待つ。カードを出さないまま始めると、「どの問を使ったか」を追う作業が成立しない。

場面1 失敗① 禁じ手から入る(約2分)

講師

お忙しいところ10分だけ、ありがとうございます。早速ですが ── AIで、送迎、何かできませんかね?

主任K

ああ、いいですね。なんか便利なやつ、いい感じにできたら嬉しいです。

K役への注意。この返事を、投げやりな口調で言わない。Kは善意で、精一杯答えている。それでも要望しか出てこない、という設計である。
講師(受講者へ向いて)

はい、1つ目の失敗です。禁じ手を最初にやって見せました。「AIで何かできませんか」と手段から聞くと、返ってくるのは「便利なやつ、いい感じに」── 作るものは1ミリも決まりません。仕切り直します。

ここで一拍おく。受講者が「いま失敗を見た」と気づく時間を作る。解説を重ねない。言い直しの実演そのものが教材になる。

場面2 問1 直近の事実を聞く(約2分)

講師

質問を変えます。送迎の段取りの作業、最後にやったのはいつですか。そのとき、何をしましたか。

問1。一般論を聞かず、直近の事実を聞く。板書またはスライドで「問1」と示す。
主任K

昨日の夕方です。ホワイトボードの前で、明日の乗車割当を組み直していました。火曜は車椅子の子とチャイルドシートの子が重なる日で、車のやりくりに30分くらい。

講師

そのホワイトボードには、何が書いてあるんですか。

主任K

左から便ごとに、車と、運転する職員と、乗る子です。上から順に、乗せる順番。……添乗の職員は、書いたり書かなかったりですね。私は分かっているので。

属人化が本人の言葉で出た瞬間。ここで解説しない(整理は場面8でまとめて行う)。受講者が写経していれば、それで十分に届いている。
様式15 ②-c

読み合わせ台本(全文・その2)

場面3 問2 ── 場面6 問5

場面3 問2 一番時間がかかる部分(約1.5分)

講師

その組み直しで、一番時間がかかるのは、どの部分ですか。

主任K

変更の電話です。「明日は祖母が迎えに行きます」の電話が1本入ると、車も順番も全部組み直しで……学校行事で下校時刻が変わる週は、毎日です。

講師

その電話は、だいたいどれくらい入りますか。

主任K

週に3本か4本でしょうか。行事の週は、もっとです。

数字は、聞けば出てくる。聞かなければ出てこない。この一往復は、受講者が写経しやすい典型例なので、少し間を置いて読む。

場面4 問3 やらないと誰が困るか(約1.5分)

講師

それをやらないと、誰が困りますか。

主任K

まず子どもが困ります。お迎えが来ない。家族も、学校も。運転する職員も、誰を乗せるのか分からないまま出られませんから、送迎そのものが止まります。

講師

運転する職員は、どこで止まるんでしょうか。

主任K

出発の前です。表がないと、車は出せません。出したところで、どこへ向かうか分かりませんから。

場面5 問4 しのぎ方を聞く(約2.5分)

講師

今は、どうやってしのいでいますか。

講師(受講者へ)

ここが今日いちばん大事な質問です。しのぎ方の存在=本物の困りごとの証拠、でしたね。

主任K

前の日に、ホワイトボードを自分の携帯で写真に撮っておきます。朝、車の中で見返せるように。あとは新人の運転手さんには、私が助手席で道順を口で案内しています。道を覚えているのが私だけなので。

講師

その写真は、翌朝、どこまで使えますか。

主任K

……朝に変更の電話が入ったら、写真のほうが古くなりますね。いま言われて気づきました。上書きはできませんから、結局その場で書き直しています。

しのぎ方を掘ると、本人が自分で弱点を見つけることがある。ここで講師は「なるほど」と受けるだけでよい。評価も助言もしない。相手が自分で気づいた事実は、こちらが指摘した事実より強く残る。
講師

なるほど、写真と口頭案内。

場面6 問5 魔法でひとつ消せるなら(約1.5分)

講師

では、もし魔法でひとつ消せるなら、どの手間を消しますか。

主任K

電話のたびに、最初から全部組み直す手間です。条件は変わっていないのに、毎回ゼロから考え直している気がします。

「条件は変わっていないのに」──この一言が、第9回の依頼シートと第10回のルールブックにつながる。受講者に拾わせたい言葉なので、少し置いてから次へ進む。
様式15 ②-d

読み合わせ台本(全文・その3)

場面7 要約の確認と失敗② ── 場面8 実演後の整理

場面7 要約して本人に直してもらう(約3分)

講師

ありがとうございます。まとめて言い直します。「送迎担当の主任が、毎夕、翌日の乗車割当の組み直しに毎日30分かかって困っている」── 合っていますか。

主任K

30分で済む日はいい日です。変更の電話が入った日は、1時間近くかかります。それと、時間より怖いのは……乗せ忘れです。組み直した日ほど、間違いが怖い。

講師(受講者へ)

2つ目の失敗です。私はいま、「毎日30分」と自分の想像で数字を言いました。直されましたね ──「電話の日は1時間」。そして、数字を直してもらった拍子に、もっと大事な言葉が出てきました。「乗せ忘れが怖い」。想像で埋めるのは、AIのでっち上げと同じです。人間も、確かめる。だから最後に「合っていますか」と本人に直してもらうのです。

講師

いまの「乗せ忘れが怖い」を、もう少しだけ聞かせてください。今は、どうやって防いでいますか。

主任K

降ろすたびに、座席を一列ずつ見て回ります。最後に、送迎表のいちばん下のサイン欄に自分の名前を書きます。ここだけは、誰にも代わってもらっていません。

問4を、時間の困りごとではなく安全の不安に対して、もう一度当てている。ここで出たサイン欄が、第10回以降「送迎表の最後にサイン欄を必ず残す」設計の根拠になる。受講者が写経していなければ、場面8で講師から読み上げる。
講師

もう一度だけ言い直します。「送迎担当の主任が、毎夕、翌日の乗車割当の組み直しに、1日1回・約30分、変更の電話が入った日は約60分かかっていて、組み直した日ほど乗せ忘れが怖い」── これで合っていますか。

主任K

はい。それです。

場面8 実演後の整理(受講者へ・約4分)

講師

2回の失敗、整理します。1つ目、禁じ手 ──「AIで何かできませんか」。手段から入ると要望しか出ない。2つ目、要約の数字を想像で言った。直されるのが正解で、直された瞬間に困りごとの輪郭がはっきりする。そして、Kさんの最後の言葉に注目してください。「乗せ忘れが怖い」── 時間の困りごとの奥に、安全の要求が隠れていました。これが、掘るということです。皆さんがチャットに写してくれた質問は、そのまま来週の宿題で使えます。

講師

もう一つ、気づいてほしいことがあります。いまの10分で、お子さんの名前も、ご住所も、学校の名前も、一度も出てきませんでした。出てきたのは、役職と、数字と、「ホワイトボード」「写真」「サイン欄」という手元の話だけです。皆さんの本番の聞き取りも、同じやり方でいきます。メモは役職で書く。実名は書かない。出てしまったら、その場で消す。

写経されたチャットから2件を読み上げて締める。選ぶ基準は「そのまま宿題で使えるか」。問4に当たる質問が写経されていれば優先して拾う。1件も写経がない場合は、講師が問4と場面7の言い直しの2つを読み上げ、「この2つだけ持って帰ってください」と伝える。
様式15 ②-e

実演中に起きやすいことへの備え

分岐の応答と、講師の自己点検。

受講者から質問が出た場合

「うちの実際の住所でやってみたい」と言われたら

次の定型句で返します。要約も省略もしません。──「その気持ちが、この講座のゴールです。ただし住所は、この画面には入れません。手順は二段です。教室では記号と架空の町で仕組みを完成させる。職場では、紙の対応表で人間が名前と住所に置き換える。AIに住所を渡さなくても、仕組みは動きます。実運用の3条件は、使い方メモの④に書いてあります。」

進行が押した場合に削ってよい順

失敗①・失敗②・問4・場面7の言い直しは、どの場合も削りません。この4つが、この実演の骨格です。

講師の自己点検(実演直後に、余白へ記入する)

点検項目できた/できなかった
五問を、カードと同じ文言で読んだか(言い換えていないか)
失敗①のあと、一拍おいたか
K役の答えを、聞く前に先取りして言わなかったか
場面5で、Kの気づきに助言をかぶせなかったか
台本にない実話・事例を足さなかったか
実所要分数(  分)を余白に記入したか